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ここはサークル角の夢です。
現在、『失踪諸因』を製作中です。
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■ プロローグ ■

そこは夜のプラットホームだった。

季節はそろそろ残暑と銘打つ時期だが、多少最高気温は下がったものの体感温度は一向に下がらなかった。

だが、ここは冷気に満ちていた。空間は静寂に満たされ、生き物2つはピクリとも動かなかった。

男と女である。

「探したんですよ」

実際にそこに冷気が当てられている訳ではなかった。だが、寒かった。
昼間に熱されたアスファルトがいまだに陽炎を放っているのだから、暑くない訳がない。
だが、彼らの全身には汗一つ浮かんでいない。

彼と彼女は異質なのだ。この世界に生まれた異端者だった。彼は追う者。彼女は追われる者。

彼らの追跡劇はこの一夏の間、行われた。彼は彼の持ち得る凡ての力を出したし、彼女は
それに答えるように死力を尽した。そして、この追跡劇は、今、幕が引かれようとしている。

だが、結末はどうなるか二人はわからない。

綺麗に幕が下がり、客席から拍手喝采が起こり、アンコールの幕が上がり、
今までの追跡劇に出演した人達が頭を下げて去るようなフィナーレではない。
見事にまで構築されたその芝居は誰の目にも鮮やかだったが……それにしては人が死に過ぎている。

「あら、何の用かしら?」

彼女は答えた。

「ずっと探していたんですよ、貴女のことを」

「いなくなったつもりはないんですけどね、勝手に失踪扱いしないでくれます?」

彼女はそう言って、目の前にある大きな鞄を持ち上げた。旅行用の大きな鞄。
着替えやら何やらが入っていた。電車が来る。

彼は思っていた。
彼女が電車に乗ってしまったら、自分の負けだろう。
もし彼女をこの場に引き止めることが出来たらなら、勝てるかもしれない。

彼は知っていた。
勝利と言うのは主観的な価値であり、彼女が法的な裁きを受ける事が勝利ではないということを。

彼にとっての勝利とは総ての犯罪を暴き、彼女を屈伏させることのみである。

「何故このようなことを?」

「見送りに来てくれてありがとう」

彼女は質問に答えるつもりはさらさらなかった。
最小限の笑みと最低限の挨拶。僅かな行動で相手を御す。
静から動への移り変わりは微少でも絶大である。

電車は止まり、ドアが開く。

「凡ては貴女の仕業なのですね?」

彼女は無表情から笑みに変え、ゆっくりとうなずいた。

惨劇はドアと共に締められた。

■ 藤沢欣吾(幼年期) ■

 

■ 榎本柚子(幼年期) ■



■ 三原千夏 ■




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